福岡市科学館×九州大学 共同研究プログラム 

共創チャレンジ

2021.07.01

法人

チーム名サイエンス&クリエイティブ
共創メンバー
福岡市科学館
現在の活動地域 国/地域日本 福岡
活動テーマ
■共創チャレンジの内容

サイエンス&クリエイティブをコンセプトとして活動する福岡市科学館と、組織対応型連携契約を結び包括的連携を行っている九州大学とは、開館当初から共同研究を行っています。2020年度からは、サイエンスジュニア養成講座「ダーウィンコース」を開講しました。フィールドに出て観察や実験を通して五感を働かせ「科学する力」を養うこと(サイエンス)と、身につけたことを個性を活かして「表現する力」を養うこと(クリエイティブ)を目的として、子供たちの探求心や自制心、創造する力を養っています。
また、2021年度からは新たに「ニュートンコース」を開講し、万有引力を発見したニュートンの様に、目には見えないものを見るために物理・化学・情報といった科学の視点で子供たちの「科学する力」を養います。

■展開したい地域

全国の公共文化施設、大学、企業等に新しい取り組みをオンラインで紹介したり、アウトリーチによってプログラムの実践を行い、体験を共有していきたいと考えています。また我々のプログラムについてさまざまな視点からアドバイスをいただき、今後の共同研究に活かしていきたいと考えています。

■共創を希望する方々

活動に賛同する、初等中等学校および公共団体、大学、企業等

■大阪・関西万博テーマとの関わり

万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、その実現にSDGsが基本にあることは、我々が目指す次世代の科学者養成講座の目的と一致しております。我々のプログラムは実践的であり、万博に集まる世界の子供たちに対して、科学的な視点から「問をたてる」こと、「考えを表現する」ことの大切さを体験・実感していただくことが可能です。未来社会のデザインには、サイエンスの経験とクリエイティブな表現力の両面が不可欠です。我々が共創チャレンジに参画し、世界の子供たちがこのプログラムを受講することは、万博のテーマの実現に大きな役割を果たすと考えております。

このチャレンジの投稿

  • ダーウィンコース”心理の回”

    2021年8月29日、9月5日に行われたダーウィンコース「心理の回」の投稿です。   本講座では、「昆虫食の心理学」をテーマに研究を行いました。今回研究手法を教えてくれたのは、幅広い心理学的事象を研究されている錢 琨(せん・こん)先生。「どうして昆虫食が苦手な人がいるのだろう、なぜ苦手なのだろう」という疑問を解き明かすため、アンケート調査~集計~分析を行うことになりました。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態措置期間であったため、オンラインで実施されました。   1、史上初!?小学生による昆虫食の心理学調査のための「尺度」づくり 実は、昆虫食の心理学のアンケート項目を構成するための、決まった「尺度」(注1)はまだありませんでした。そのため、小学生による小学生のための、昆虫食心理学調査の尺度作りから始めました。まず初めに、「昆虫食をどう思うか、どんなイメージなのか」と考えたときに思いつくワードをグループに分かれて出し合いました。そこで出たイメージをグループごとに発表し、みんなで相談しながらアンケート項目を19項目に絞りました。   (注1)心理測定尺度のこと。目に見えない心理を把握するための「心の物差し」でありいくつかの質問に対する回答を得点化することにより、心理現象を量的に測定できる。   2、アンケート調査、そして分析 作成した昆虫食の心理学のアンケートは、6日間、ダーウィンコース受講者のお友達にインターネット上で回答してもらいました。回収したアンケートは、錢先生に分析のための「バイオリンプロット」(注2)や「相関図」を作成してもらい、読み解き方のレクチャーを行っていただきました。データから気付いたことをみんなで話し合い、「どうして昆虫食が苦手な人がいるのだろう」「なぜ苦手なのだろう」という疑問について考えました。   (注2)回答の分布(散らばり方)が見やすいようにバイオリンの形のような図になっていて、パっとみてデータの特徴を見ることができます。   3、調査から見えてきた「どうして昆虫食が苦手な人がいるのか」 アンケート結果の分析から分かったことは、虫の「見た目」や「形や味」と、虫を食べる「抵抗感」に相関関係があったことです。他にもいくつかの質問項目で、相関関係があることが分かりました。 調査を通して分かったことや気付いたことから、昆虫食をより多くの人に受け入れてもらうためには昆虫をきれいにすれば良い?形をなくせば良い?味をよくすれば良い?などの方法をみんなで考え、最後はワークシートに絵で表現していきました。      ★オンライン受講中の様子   さいごに コロナ禍でのオンライン実施にも関わらず、子どもたちは積極的に発言したり、アンケート調査の依頼をお友達にしたりと、楽しく研究することができました。とくに尺度作りの段階でアンケート項目を絞っていくとき、とても活発に意見を出し合ってくれました。子どもたちが気付き、発言し、アンケート項目をより良いもの変えよう!と取り組む姿は、まさに研究者の卵でした。その結果、実りある調査研究を実施することができました。

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  • ダーウィンコース”川の回”

    2021年7月18日、8月1日に行われたダーウィンコース「川の回」の投稿です。 7月18日の本講座では、『樋井川にはどんな生きものがすんでいるの?』という 疑問から、福岡市の油山から博多湾へ流れる樋井川で生きものをつかまえて、 それが何という生きものなのかを調べる“同定”を行いました。 樋井川では、海水がまざる汽水~淡水の幅広い範囲で、みんなで協力して生きものを つかまえました。 ①樋井川で色々な魚やえび、かにをつかまえました。                 友だちと協力したり、ひとりで黙々と獲物を狙ったり、楽しく活動できました。 見える魚を追うより、岩や植物の陰に網を入れて探る方が、効率よく捕獲できました。 つかまえた後は、色や模様で見分け、同じ生きもの同士を集めて分類し、 そのからだの特徴から呼び名をつけました。最後は名前が知りたい生きものを 1個体選び、色々な角度から写真撮影をしました。 ②この魚の名前はなんだろう?シマウマみたいな縞毛様をしているので「シマウマハゼ」と名付けました。                   8月1日の探Qゼミでは、本講座で選んだ生きものの同定を行いました。 図鑑に載っているたくさんの生きものの写真と、自分で撮影した生きものの写真を 見比べながら探しました。 ③図鑑を読んで同定をするなかで、いろいろな知識を得ました。                 図鑑に載っている絵や写真は、繁殖期の鮮やかなものが多く、捕まえた個体と 異なるように見えることもあり、見た目で判断が難しくても図鑑に載っている生態を 調べることで同定できることもわかりました。      

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  • ダーウィンコース ”食の回”

      今回は6,7月に行われた「食の回」についての投稿です。 福岡市科学館の交流室で実施されました。 6月27日の本講座では、『私たちは味をどのくらい正確に伝えられるか』という問いに答えるための検証実験を、人間自身が実際に食べものをテイスティングし、その味を分析機器に代わって五感で判断・分類する「官能評価法」を用いて行いました。 まず、1回目のテイスティングでは、参加親子各自に、いりこや鰹節など、単一の食材からとっただしを飲み比べ、感じた味を表現するのにふさわしい言葉を一つのだしにつき3つずつ書き出してもらい、味を表現する言葉が、五味のような基本味・風味や香り・食感・濃淡・風景やモノのイメージを示す言葉に分類できることを理解しました。   さらに2回目は、2種類以上の食材(成分)を組み合わせた「合わせだし」や市販の化学調味料のテイスティングを行い、その味を表現するのにふさわしい言葉を、1回目に書き出した言葉の中から選んでもらいました。               ①何の「だし」かがわからない、番号を記しただけのテイスティング用のだしが入った紙コップ。 ②飲み比べた「だし」の味を伝える言葉を書き出す。官能評価は、五感を研ぎ澄ませ、感じた味を表現するのにふさわしい「言葉」を見つけることから始まる。   7月4日の探求ゼミでは、参加者それぞれが選んだ食べものを、色・温度・基本味に関する視覚的表現やオノマトペ言葉で表現してもらい、選んだものが何かを当てるクイズや、本講座で味わった「合わせだし」の言葉による味表現の回答例から、どのだしかを推測するクイズを行いました。これらのクイズを通じ、『個人が感じた味を、他の人に伝えることの難しさ』をまず確認できました。 その上で、『味の言葉に関するデータをどのように扱えば、食べものの味を他者に伝えることができるか』を考えてもらい、測定にバラツキがあるデータは、たくさん集めることで特徴が見えやすくなることを学びました。 最後に、食べものの味のように、複数の項目によって測定・表現される(多変量)データを分類することが人間には難しいことをパズルで体感し、そのような場合は、専用の解析プログラムを用いると、素早く、わかりやすく、分類・図示できることを学びました。   ③合わせだしの味を表現する言葉のうち、回答数が多かった味表現に色をつけてパズルピースのように表現し、似たもの どうしを近くに並べ換えた例。例えば、鰹節や鯛、それらに昆布を合わせただし(下4段)では、しょっぱさや魚・海の風味を相対的に強く感じているのがわかる。ところが、組み合わせる食材を昆布からトマトに変えた合わせだし(上2段)では、すっぱさや野菜の風味を相対的に強く感じている。            ④全員の官能評価データを2次元グラフ化し、どのように合わせだしの味を分類できるかを館長より解説。   この実験から、五感で感じた味を表現するのにふさわしい言葉を、できるだけ多くの人から集めて見つけ出し、その言葉をものさしにすれば、様々な味を分類し、いろんな人に伝えられることを理解してもらえたのではと思います。分析の結果、『キノコだしの味に対して、大人と子どもの間で感じかたに違いがあるかもしれない』という新たな発見もありました。                

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