今回は6,7月に行われた「食の回」についての投稿です。
福岡市科学館の交流室で実施されました。
6月27日の本講座では、『私たちは味をどのくらい正確に伝えられるか』という問いに答えるための検証実験を、人間自身が実際に食べものをテイスティングし、その味を分析機器に代わって五感で判断・分類する「官能評価法」を用いて行いました。
まず、1回目のテイスティングでは、参加親子各自に、いりこや鰹節など、単一の食材からとっただしを飲み比べ、感じた味を表現するのにふさわしい言葉を一つのだしにつき3つずつ書き出してもらい、味を表現する言葉が、五味のような基本味・風味や香り・食感・濃淡・風景やモノのイメージを示す言葉に分類できることを理解しました。
さらに2回目は、2種類以上の食材(成分)を組み合わせた「合わせだし」や市販の化学調味料のテイスティングを行い、その味を表現するのにふさわしい言葉を、1回目に書き出した言葉の中から選んでもらいました。
①何の「だし」かがわからない、番号を記しただけのテイスティング用のだしが入った紙コップ。
②飲み比べた「だし」の味を伝える言葉を書き出す。官能評価は、五感を研ぎ澄ませ、感じた味を表現するのにふさわしい「言葉」を見つけることから始まる。
7月4日の探求ゼミでは、参加者それぞれが選んだ食べものを、色・温度・基本味に関する視覚的表現やオノマトペ言葉で表現してもらい、選んだものが何かを当てるクイズや、本講座で味わった「合わせだし」の言葉による味表現の回答例から、どのだしかを推測するクイズを行いました。これらのクイズを通じ、『個人が感じた味を、他の人に伝えることの難しさ』をまず確認できました。
その上で、『味の言葉に関するデータをどのように扱えば、食べものの味を他者に伝えることができるか』を考えてもらい、測定にバラツキがあるデータは、たくさん集めることで特徴が見えやすくなることを学びました。
最後に、食べものの味のように、複数の項目によって測定・表現される(多変量)データを分類することが人間には難しいことをパズルで体感し、そのような場合は、専用の解析プログラムを用いると、素早く、わかりやすく、分類・図示できることを学びました。
③合わせだしの味を表現する言葉のうち、回答数が多かった味表現に色をつけてパズルピースのように表現し、似たもの どうしを近くに並べ換えた例。例えば、鰹節や鯛、それらに昆布を合わせただし(下4段)では、しょっぱさや魚・海の風味を相対的に強く感じているのがわかる。ところが、組み合わせる食材を昆布からトマトに変えた合わせだし(上2段)では、すっぱさや野菜の風味を相対的に強く感じている。
④全員の官能評価データを2次元グラフ化し、どのように合わせだしの味を分類できるかを館長より解説。
この実験から、五感で感じた味を表現するのにふさわしい言葉を、できるだけ多くの人から集めて見つけ出し、その言葉をものさしにすれば、様々な味を分類し、いろんな人に伝えられることを理解してもらえたのではと思います。分析の結果、『キノコだしの味に対して、大人と子どもの間で感じかたに違いがあるかもしれない』という新たな発見もありました。