無価物から有価物へ 出荷されない果実を化粧品原料へ生まれ変わらせる

共創チャレンジ

2024.09.26

6

法人

チーム名松山油脂富士北麓ラボラトリーと山梨大学長沼研究室
共創メンバー
松山油脂株式会社
現在の活動地域 国/地域日本/山梨県
活動テーマ
■共創チャレンジの内容

【事業概要】
・私たちは、キズや過熟等の不良により青果として出荷できないモモを活用した化粧品原料の開発に取り組んでいます。
【共創のきっかけ】
・松山油脂富士北麓ラボラトリーは、山梨県富士河口湖町の富士箱根伊豆国立公園内に拠点があります。森に囲まれた自然豊かな土地で、化粧品への配合を目的とした植物由来原料の研究や食品・雑貨等の企画開発を行なっています。原料開発では、富士北麓地域に自生する野草や有用植物を自社農園で栽培したり、国内の農家様より調達した植物の活用方法を検討したりと、古くから日本の暮らしで活用されてきた植物の力をデイリープロダクトに活かす取り組みを行なっています。
・富士北麓ラボラトリー誕生のきっかけは、2017年秋の山梨大学長沼教授との出会いでした。長沼教授は、微生物研究を通して環境問題や社会貢献に取り組まれており、そのひとつとして地球温暖化抑制に有効と考えられているバイオ燃料のもととなる油脂開発を行なっていました。この研究では、山梨県産のモモ果汁を原料として、果汁に含まれる糖を分解する(発酵)過程で、油脂を産生するリポミセス酵母の一種を人工的に生育・増殖させる技術の確立に成功していましたが、この技術で回収できる油脂では、バイオ燃料に実用化できるレベルまで生産量を確保することは困難でした。
・そこで、長沼教授は松山油脂にリポミセス酵母を使った果汁から油脂を産生する技術を活用し、化粧品原料の開発ができないか相談を持ち掛けてくれました。山梨大学は、松山油脂が掲げる「安全性と環境性、そして有用性のバランスを満たすモノづくり」という理念に以前から共感しており、松山油脂も、「本来無価値なものに価値を与えて有価物に再生する」ことに意識的に取り組んできたことから、「キズや過熟等の不良により青果として出荷できないモモ」を原料とした化粧品原料開発を、山梨大学と共創して取り組むことにしました。
【産学連携の軌跡】
・取り組みの当初、化粧品原料として油脂の活用を検討しましたが、この技術で製造可能な油脂量では化粧品原料としても生産量が足りませんでした。そこで、リポミセスが果汁を発酵させる過程で産生される多糖類を含む大量の果汁に着目し、リポミセスが産生する油脂と多糖類を混合した原料開発(発酵液)を目指す方針に切り替えました。この方針転換により化粧品原料としての活用に必要な量の確保が可能になりました。また、多糖類も含めることで糖類由来の保湿効果も見込めると考えましたが、この発酵液単体の保湿性を試験したところ、水と同等の作用しか認められず、前例のない技術ということもあり、応用は簡単には進みませんでした。
・ところが、発酵後の処理方法や試験方法を模索する中で、松山油脂既製品中の水を発酵液で置換した試作品で、使用直後の肌の水分量が向上することを見出しました。これは、松山油脂既製品に含まれる原料との相乗効果と考えられ、これまでの製品よりも7%ほど保湿効果を向上させることができました。この結果は私たちにとっては予想外の出来事でしたが、これまでの原料開発における様々な試行錯誤の結果が結びついたものと考えています。
・私たちはこの発酵液を「モモ果汁発酵液」と名付け、松山油脂既製品ブランドの有用成分としてシリーズで配合することにしました。リポミセス酵母の発見と増産技術を確立した長沼研究室、リポミセス酵母が生み出したモモ果汁発酵液の化粧品原料への加工方法と有用性を発見し、化粧品原料に応用した富士北麓ラボラトリー、それぞれが持つ得意分野を掛け合わせ、技術やノウハウ、資源のバトンが繋がったと実感した瞬間でした。
【今後の展開】
・発酵液は、植物がもともと持つ成分と微生物が発酵過程で生み出す成分とにより、様々な価値が生まれるため、掛け合わせによって無限の可能性を秘めています。これからも、リポミセス酵母の発酵技術が活かせる県内外の農産物生産者様や、発酵技術の研究を行なっている研究機関の方々と共創することで、技術と産業を結び付け、不要と思われていたものに光を当てる活動を進めていきたいと考えています。

■必要なリソース

原材料: キズや過熟等の不良により出荷できず廃棄される農産物

■展開したい地域

山梨県内、特に富士北麓の農業地域

■共創を希望する方々

・キズや過熟等の不良により出荷できず廃棄している農産物を提供いただける農家様
・酵母や発酵技術の研究を行なっており、実用化への展開をお考えの教育機関や研究機関の方々

■大阪・関西万博テーマとの関わり

昨今の気候変動による農産物の品質低下や生育障害はこれからも深刻化していくことが予想されます。キズやサイズ、変形などにより廃棄されてしまう農産物にも、貴重なリソースが当てられて栽培や収穫が行なわれています。今後国内で増々加速が予想される人材不足や農産物の不作に対し、不良となった農産物を買い取り、発酵技術により新たな価値を付与して化粧品として有効に使っていただくことは、資源を無駄にせず、人々が豊かに暮らし、いのち輝く未来社会をつくることに貢献できるものと考えます。

■連絡先

ホームページ:https://www.matsuyama.co.jp/contact2
メールアドレス:info@matsuyama.co.jp

この共創チャレンジを支援する共創パートナー

  • 経済産業省 関東経済産業局

C10307
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