持続可能性(サステナビリティ)が国際社会全体の課題とされ、SDGsが提唱される現在では、国だけがその責務を担うのではなく、企業を含む社会全体がその責任を持ち、実践に至ることが求められています。
このような要請を決定づけたものが、2011年に国際連合が人権理事会で採択したガイドライン「ビジネスと人権に関する指導原則」です。また、日本においても、2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」、2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が続けて策定され、企業が経済活動の中で取り組むべき人権擁護を、実践的な視点から支える基礎づくりが進んでいます。
経済活動のグローバル化に伴い、企業活動が、地球環境や生活に及ぼす影響はより一層拡大しています。これまで企業が利益追求を優先し、コンプライアンスやサプライチェーン上の人権等を軽視してきたことで、様々な社会問題が発生してきました。
今、企業を取り巻くステークホルダー(消費者、労働者、顧客、取引先、地域社会、株主など利害関係者)から企業に求められているのは、利益追求のみではなく、人権を擁護し、持続可能な社会の実現に貢献することです。
そして、それは、大企業だけではなく、中小企業も例外ではありません。
消費者、労働者、顧客、取引先などの「人に選ばれる」企業になるためには、企業の規模にかかわらず、積極的に「ビジネスと人権」に取り組み、人権を擁護し、持続可能な社会の実現に向けた課題の解決に貢献する姿勢が必要です。その要請に反する企業は「人に選ばれる」ことなく淘汰される社会に近づいています。
それでは、大企業ほど人的資源、経済的資源が十分であるとはいえない中小企業が「ビジネスと人権」に取り組み、「人に選ばれる」企業になるためには、どのような方法が考えられるでしょうか。この後の記事で順番にご説明していきます。