海藻が 人と海を 豊かに、健康に。

共創チャレンジ

2024.03.04

法人

チーム名海藻ラボ
共創メンバー海藻ラボ株式会社
山本 博文(徳島文理大学)
岡 直宏(徳島大学)
酒井 羽海(Full Moon Works)
主な活動地域日本 / 徳島
活動テーマ食 / 海洋、水 / 生物多様性、自然環境、生物 / 農業、林業、水産業 / 大阪・関西万博の内容周知、テーマや意義の発信 /

私たちの共創チャレンジ

近年,地球規模での海水温の上昇や水質変化が引き金となって、天然に自生している海藻は減少し、海洋生態系に波及した海の砂漠化が深刻な問題となっています。このような背景のもと、私たち海藻ラボは、海藻と海のバクテリアの共生関係に着目した海藻の安定培養に取り組んできました。そして、現行の海面養殖とは全く異なる陸上での養殖システムを開発し、現在は通年的に2種類の食用海藻を陸上養殖しています。太陽と天然海水を利用することで、持続可能な最先端の養殖システムです。
日本の領海面積は世界6位で、近海には1,500種類もの海藻が自生しているといわれています。海藻は健康維持にとって重要なミネラルやビタミンを豊富に含むことから、日本では海藻を習慣的に接収する食文化を古くから築いてきました。そのため、昨今の環境変化により減少を続ける海藻資源を安定生産し、豊かにすることは、国内マーケットを活性化するだけでなく、日常的に海藻を食するアジアの国々をはじめ、近年、健康食として海藻が注目されている欧米など、世界の食と健康に貢献できるチャレンジです。
一方、海藻は、光合成により大気中から海水に溶け込んだ二酸化炭素CO2を吸収して成長するため、海藻そのものが優れたブルーカーボンです。海藻のCO2を吸収する能力は高く、年間の人為起源CO2排出量の約30%を吸収するといわれています。最近では、CO2の増加により、気温や海水温の上昇だけでなく、CO2が海水に溶け込むことで引き起こされる海の酸性化も問題化しています。そのため、環境変化に対応した新たな海藻養殖技術の開発やそのシステムの拡充は、豊かな食生活を実現するだけでなく、持続可能な社会や環境の再生に寄与します。

未来への宣言

有史以来、人間は自然と共生してきました。
先人から引き継いだ、この地域、この国、この地球を、未来へつなげていくのが、現代を生きる私たちの使命です。

・海藻ラボの陸上海藻養殖システムで、日本の食文化を守り、海藻食マーケットを豊かにします
海藻食の歴史は古く、大和朝廷時代には神事の供物としても重宝されてきました。欧米等では、健康的で持続可能な食材として、今、海藻食が注目されています。

・養殖量の拡大により、海水温の上昇、海洋酸性化の進行を抑制し、地球温暖化防止に貢献します
海藻は、優れたブルーカーボンです。養殖量を拡大することで、CO2削減への貢献度を高めます。

・海藻陸上養殖の研究を進め、環境調和型の持続可能なシステムを開発します
学術機関との共創をさらに深め、地球の未来に、より貢献できるシステムへと進化させます。

・陸上海藻養殖システムの展開地域を拡大し、より豊かな未来社会を実現します
太陽光とその地域の海水のみで陸上養殖するシステムは、資源の乏しい地域・国においても、その地域の海洋環境に適合した海藻を選択することで、容易に展開できる可能性を秘めています。

きっかけ

これまで、海藻の養殖や育種改良に関わる技術開発は一部の種に限られており、陸上植物の栽培と比べて大きく遅れてきました。原因は、海藻の種苗を安定的に培養し維持管理することが、陸上植物に比べて困難であるため、病害に強い品種や、変わりゆく海洋環境に適した品種の開発に関わる基礎技術が発展し難かったことを挙げられます。こうした中、2016年に徳島文理大学薬学部兼生薬研究所の山本博文教授が、海藻に付着するバクテリア(海藻-バクテリア共生関係)に着目し、海藻の付着バクテリアが生合成する藻類成長促進因子を利用して、食用海藻の新たな種苗培養法を開発し、水槽での短期間養殖に成功しました。当時、この技術はメディア等でも取り上げられ、衰退を続ける海藻養殖産業の復活をかけた革新的技術として注目されました。その後、海藻養殖の専門家である徳島大学バイオイノベーション研究所の岡直宏准教授が加わり、鉄分を豊富に含む紅藻の陸上養殖や水槽養殖での生産効率に関わる技術開発が推進されてきました。
一方、日本の海産物に占める養殖割合は20%程度で、養殖が約50%を占める世界漁業生産と比べると、圧倒的に低値です。そのため、水産資源減少に対する国内対策として、早急に養殖比率を上げていくことが求められてきました。私たち海藻ラボのグループ会社は、70年以上に渡り、海藻を主原料としたつくだ煮の製造を行ってきました。その一方で、年々減少し、不安定化する海藻原料マーケットの将来に危機感をいだいてきました。このような背景もあり、 徳島県水産業の成長産業化及び関連産業の振興に関する協定(マリンサイエンスゾーン協定)のもと、徳島県を含め、産学官の共創がスタートし、2018年10月に、陸上海藻養殖の研究と実用化を目指す海藻ラボ株式会社を設立しました。

取組の展開

今後展開したい地域・方法日本の沿岸部、そして世界の沿岸部へ。
自然の恵みを最大限活用する、海藻ラボの陸上養殖システムは、海水の取水が容易な立地が最適です。
共創を希望する方々海藻の養殖量増大と消費拡大が、より多くの人とより広域の海を、豊かに、健康にします。
・海藻の良さを引き出す料理を考案、提供する方
・海藻のすばらしさを世の中に発信する方
・海藻資源の回復に取り組む、研究者、行政機関の方

大阪・関西万博のテーマとの関わり

「いのちを救う(Saving Lives)」
食は、命の根源です。海藻の育成は、太陽光とその土地の海水のみで行えるため、資源の乏しい地域・国においても、ビタミン、ミネラルなどの栄養豊富な海藻の生産・供給が可能となります。
海藻ラボの陸上海藻養殖システムは、その地域の海洋環境に適合した海藻を選択することで、日本国内のみならず世界中に展開できる可能性を秘めています。

「いのちに力を与える(Empowering Lives)」
大和時代から続く海藻の習慣的な摂取は、日本人の健康を支えてきました。その海藻生産量は、年々減少おり、供給量の増加が求められています。
海藻は、光合成により、海水中の二酸化炭素CO2から効率的に炭素Cを吸収・固定化し酸素O2に変え、海水温の上昇や海洋酸性化に対する抑制効果が期待されます。
陸上海藻養殖は、健康な食生活と地球温暖化問題の両方に貢献します。

「いのちをつなぐ(Connecting Lives)」
海藻食は、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、タイなどアジアの国々、また、ハワイやアイルランドなどの諸島でも昔から日常的に食されており、近年は、健康食として、また、持続可能な食材として、欧米での注目度が上昇しています。
陸上海藻養殖システムは、環境負荷が少なく、持続可能なものです。人類の食を豊かにし、同時に海の環境も豊かにします。

SDGsとの関わり

SDGs9 産業と技術革新の基盤をつくろう
従来の海藻養殖は、それぞれの海藻に適した海水温があるため、収穫期間が2~4ヶ月と限定されます。また、陸上養殖は、施設設置のイニシャルコストに加え、海水の循環・ろ過、人工光源などのランニングコストも、事業化の障害となっています。
海藻ラボは、最適生育水温の異なる、二種類の海藻の通年二毛作養殖システムを開発しました。施設は沿岸部に立地し、汲み上げた海水を直接施設に引き込み、かけ流しで使用しています。海藻の光合成に必要な光源は、自然の太陽光のみで、自然の力を最大限活用した、持続可能な陸上海藻養殖二毛作システムです。
さらに、環境負荷のより少ない養殖システムの開発に取り組み、化学的な処理や栄養成分を一切使用せず海藻を生育することに成功しました。2023年12月、陸上養殖海藻として日本初の有機藻類認証を取得しました。

SDGs13 気候変動に具体的な対策を
沿岸部に立地する施設は、津波や台風のリスクがより伴います。海と養殖場の間に、海水を引き込んだ緩衝池を設け、災害リスクを低減しています。
また、徳島文理大学、徳島大学の先生方との共同研究を通じ、大学教育の場としても、利用されています。
2021年8月、約20名の小学生が、海藻ラボの養殖施設を訪れ、徳島文理大学山本教授が講師となり、海と海藻を学ぶイベントを行いました。

SDGs14 海の豊かさを守ろう
日本の漁業生産量に占める養殖の割合は2割程度と農業に比べ圧倒的に低値です。また、海水温の上昇、海洋酸性化、貧栄養により、藻場が減少し、海洋資源の持続性が懸念されています。
海藻は、光合成によって海水中の二酸化炭素CO2を効率的に酸素O2に変換しながら炭素Cを使って成長します。吸収された炭素源は、海藻の構成元素として固定化されます。海藻は世界的に注目されているブルーカーボンです。
国土を海で囲まれた日本は、環境的にも海藻養殖に適しています。

海藻ラボ 問い合わせ

https://thebase.com/inquiry/kaisoulab-official-ec