「緑をふやす、未来へつなぐ」

みんなの投稿

投稿者株式会社博報堂
最終公開日時2022.01.20

2025年の未来に託す1GOAL&1ACTION」。今回は、従来廃棄される衣類などのポリエステル繊維を「培地」として再利用することで緑を増やし、いのちをはぐくむ活動へと発想を変えて取り組むPLUSGREEN PROJECT」の皆さん。メンバーの皆さんそれぞれの目標と、続ける・つながる「サス活」に迫りました。

ライター 腰塚安菜

 

 

チームの1ゴール:

「緑をふやす、未来へつなぐ」

 

今回、取材した共創チャレンジはPLUSGREEN PROJECT2021年に商号変更した大阪府大阪市の繊維専門商社、スタイレム瀧定大阪株式会社と、徳島で都市緑化やリサイクル繊維培地の開発を専門とするアースコンシャス株式会社、近畿大学 社会連携センターの教授らの協力によってうまれたチームだ。

 

まずは、スタイレム瀧定大阪株式会社の坂本和也さんに話をきいた。1864年の「瀧定」の創業から150年超という同社は現在、繊維専門商社として4つの事業軸を持つ。テキスタイル事業では、廃棄時のCO2排出量を40%削減できるポリエステル繊維や、ヴィーガンダウンや寝具に利用する「カポックファイバー」などの繊維を「ECOARCH®」と総称し、展開。

一方、インド企業とのパートナーシップで、綿花栽培からGOTS(※)認証発行までを自社で管理する「インドオーガニックコットンプロジェクト」のオーガニックコットンづくりなど、20212月に自社のサステナビリティに対しての方針を定めてから続々と取り組みを展開してきた。そんななか、今回のTEAM EXPOPLUSGREEN PROJECTを登録したのは「みんなで創っていく」コンセプトに共鳴したことからだという。

※オーガニック・テキスタイルを製造加工するための国際基準。

 

 

ポリエステル繊維リサイクル培地=TUTTI(トゥッティ)」を中心に共創の輪を広げる


読者の皆さんは「繊維から生まれた土」と聞いて、どんなものか想像できるだろうか。

 

ここから、主にポリエステル繊維を原材料とする培地を「TUTTI(トゥッティ)」と呼んでいく。坂本さんは培地について消費者に伝える際はシンプルに「衣類などをリサイクルした土」と伝えていると話した。「ポリエステル以外の衣類(天然繊維やセルロース等)もリサイクルして培地にできるか」と尋ねると、基本的には回収した衣類や資材系の端材などを利用して製造を行っているので問題はないとのこと。

この培地は扱いやすく、虫もつきにくく、植物が育ちやすい環境であるといった利便性もあり、ポリエステル繊維を85%以上になるようにブレンドし、その他の原材料はごく少ないそうだ。

 

20212月のプロジェクト始動以降「実際にどこで培地を見ることが出来るか」という問い合わせも多かったという。

そこで「企業関係者などへの公開できる場を」と、試験場「STYLEM AGRI LABO(スタイレムアグリラボ)」(20218月開場)の実装に取り組んできた。近畿大学の教授らのアドバイスを受けながら、本格的なグランドオープンに向けて、現在進行形で着実に準備が進んでいるそうだ。

企業関係者に培地の魅力を伝えるためには、自分たちで栽培して本質を理解する事が大切だと考える坂本さん。

TUTTI」と「STYLEM AGRI LABO」の説明を通じて、消費者に衣類などをリサイクルする重要性を伝える工夫をしてきたことや、メンバー自身が実際に体験し、チーム内でも正しい理解を共有する姿勢が伝わってきた。

 

 

■「自然はお金で買えない」。だからこそ、お客様に何かメッセージを伝えたい

 

PLUSGREEN PROJECTにはアースコンシャス株式会社という力強いパートナー企業の存在がある。代表取締役の青山恭久さんが「繊維と緑」の深い関係や、プロジェクトにかける思いの丈を話してくれた。

 

私たちが日々生かされている衣食住の中の「衣」で青山さんが繊維リサイクルに着眼した契機は、平成12年まで遡ることができる。

京都議定書が採択された後「循環型社会形成推進基本法」(循環基本法)の制定でリサイクルに関する基本的な方針が定められ、東京都を皮切りに、建物の屋上や壁面を緑化する条例が、都道府県や政令都市で次々と義務化されていった。今ではよく耳にするようになった、循環型社会推進への道筋が出来たが、青山さんは、未だ到達していない「繊維リサイクルに関する法律をつくりあげること」を個人的なゴールと考えている。

そのゴールに向かうため、「いのちのない服」を捨てるのではなく、緑や花をはぐくむ土台である「培地がうみだすいのち」を伝える活動にフォーカス。当時から、広く多くの方々に伝えたいと力を入れてきた。

 

26年前はリサイクルの取り組みへ周囲の反応も鈍く、苦労したというが、近年はサステナビリティへの追い風を感じ、このタイミングを逃さず、他社と競合ではなく協業することを前提に、これまでの技術ノウハウをオープンにしてきた。今回のスタイレム瀧定大阪社とのパートナーシップも大切に育みながら、繊維のリサイクルを通じて循環型社会推進のリーダーシップをとろうという同社の姿勢にふれた。

 

 

チーム「PLUSGREEN PROJECT」からの続ける・つながるアクション提案:

 

「服だけでなく、廃棄物全体を減らすこともゴール」というスタイレム瀧定大阪社(坂本和也さん、阿多憲明さん、小松美加さん)からは「TUTTIをまずは使ってみませんか」というサス活提案。いくら商材がよくても、体験、共感がなければ伝わらない。近年の「モノからコト」への消費動向も意識し、培地を体験し、採用を考えてほしいという。

 

「未来へつなぐ」活動の具体的事例では、例えば、渋谷の宮下パークなど自然がない都会の中心で起こす1アクションも提案。生活者の目に緑を入れながら催しを行うことで、より共感が大きくなるのではと考える。

生まれ育ちから勤務まで首都圏近郊育ちの筆者は、どっぷりと都会生活者。中でも、親子のライフスタイルの中で伝えるというアクションに大きく共感した。地域の緑化と同時にこのプロジェクトを進めることは、大阪・関西万博で掲げられる「いのち輝く未来社会のデザイン」にもつながるだろうと想像できた。

 

スタイレム瀧定大阪社の阿多さんは、この産学連携プロジェクトがハブとなり、つながりを横に広がるきっかけになればと考えているという。

また、広報の小松さんは、TEAM EXPOへの参加を自社発信するだけでなく、プロジェクトに賛同する取引先からも積極的に広報されることも、認知が広がる要素と捉えている。

 

アースコンシャス社のサス活は「いのちを育み、捨てるものに、いのちを与える」という誰にも分かりやすい活動コンセプト。

根底にあるのは「社会の健康に寄与する」マインドだそうだ。青山さんは「(企業が責任を持って)子どもたちに伝える」というもう一つのサス活にも意気込みを見せた。

青山さんのサス活のきっかけとなっているのは十数年前、京都企業との企画で実現した「ゴーヤ栽培教室」の取り組みで、夏休みに合わせて小学生や保護者と一緒にリサイクル繊維培地を使い、ゴーヤの種まきをしたというエピソード。

企業の大小に恥じらいや遠慮をせず、自らが切り開くシーズ(ビジネスの種)とニーズに共感を頂ける方々と出会うことで、垣根を越えて『未来をつなぐ活動』を続けたい」という想いは、つながる・続けるサス活の象徴と捉えられた。

 

一方、「未来へつなぐ」活動で思いを同じくするスタイレム瀧定大阪社の坂本さんからは、子どもや学生たちへの「服育」活動の報告もあった。

最近の事例では、大阪市の「あべのハルカス」で行われた学園祭で、学生団体と培地を使ったワークショップを実施。リアルなイベントで服のリサイクルを親子に体験してもらい、楽しい取り組みとなったそうだ。

 

本取材で初めてその魅力と可能性を知った「TUTTI」。今、循環型社会の実現に向けて様々な主体が様々な形でアプローチする中、際立ってユニークなアプローチをしていると感じられたPLUSGREEN PROJECT

メンバーの思いにふれ、チームのゴールやアクションプランが大阪から日本を飛び出し、世界にも伝わればと願わずにいられなかった。

アースコンシャス社の青山さん、スタイレム瀧定大阪社の阿多さんが揃って話したように「万博はひとつの通過点」。

私は私の出来ることから、普段の衣服の消費行動をいかに「循環型」に近づけるかを、今日からすぐに実践していきたい。

 

取材にご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

PLUSGREEN PROJECT」の共創チャレンジはこちら

コメント

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    株式会社博報堂さん、投稿ありがとうございます。 私も私の出来ることを今日からスタートします!

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